伊達判決を生かす会


砂川の基地反対闘争からはや半世紀。
その事件判決には裏があった。
そこに生きた証人の戦いが半世紀を過ぎてた今も繰り広げられる。

伊達判決 要旨

日米安保条約第三条に基づく行政協定に伴う
刑事特別法違反(砂川)事件判決
  昭和三十二年七月八日、東京都北多摩郡立川町所在のアメリカ軍使用の立川飛行場内民有地の測量を東京調達局が開始し、この測量に反対する砂川町基地拡張反対同盟員・支援労働組合員、学生団体員等1,000余名は、同日右飛行場北側境界場外に集合して反対し、一部の者が滑走路北側付近の境界柵数十メートルを破壊し、被告人7名は他の参加者300名とともに境界柵の破壊箇所から立入禁止のアメリカ軍使用区域に数メートル立ち入ったことは、安保条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法第二条に違反する行為である。
 憲法第九条は、国家の政策の手段としての戦争、武力による威嚇又は武力の行使を永久に放棄したのみならず、国家が戦争を行う権利を一切認めず、陸海空軍その他一切の戦力を保持しないと規定している。この規定は「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないように」(憲法前文第一段)しようとするわが国民が「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を維持し」(憲法前文第二段)、国際連合の機関である安全保障理事会等の執る軍事的安全措置等によってわが国の安全と生存を維持しようとする決意に基づくものであり、正義と秩序を基調とする世界永遠の平和を実現するための先駆たらんとする高遠な理想と悲壮な決意を示すものである。憲法第九条の解釈は、アメリカ軍の駐留は、軍備なき真空状態からわが国の安全と生存を維持するため自衛上やむを得ないとする政策論によって左右されてはならない。
 アメリカ軍の駐留が、国際連合の機関による勧告又は命令に基づくものであれば憲法第九条第二項前段によって禁止されている戦力の保持に該当しないかもしれない。しかしアメリカ軍は、わが国がアメリカに対して軍隊の配備を要請し、アメリカがこれを承諾した結果駐留するものであり、わが国はアメリカに対して必要な国内の施設及び区域を提供している。(行政協定第二条第一項)アメリカが戦略上必要と判断した際は、日本区域外にもその軍隊を出動し得、その際には国内の施設、区域がこのアメリカ軍の軍事行動のために使用され、わが国が直接関係のない武力紛争に巻き込まれる危険性があり、それを包括するアメリカ軍の駐留を許容したわが国政府は、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起きないようにすることを決意」した日本国憲法の精神に悖る。
 アメリカ軍が外部からの武力攻撃に対してわが国の安全に寄与するために使用される場合、わが国はアメリカ軍に対して指揮権、管理権を有しないことは勿論、日米安全保障条約上アメリカ軍は外部からのわが国に対する武力攻撃を防禦すべき法的義務を負担するものでもないが、日米間の密接な関係から、そのような場合にアメリカがわが国の要請に応じ、国内に駐留する軍隊を直ちに使用する現実的可能性は頗る大きいものと思われる。 アメリカ軍がわが国内に駐留するのは、日米両政府の意思の合致があったからであって、アメリカ軍の駐留は、わが国政府の行為によるものであり、わが国の要請とそれに対する施設、費用の分担その他の協力があって始めて可能となるものである。わが国が外部からの武力攻撃に対する自衛に使用する目的でアメリカ軍の駐留を許容していることは、指揮権や軍出動義務の有無に拘わらず、憲法第九条第二項前段によって禁止されている戦力の保持に該当するものであり、結局わが国内に駐留するアメリカ軍は憲法上その存在を許すべからざるものと言わざるを得ない。
アメリカ軍が憲法第九条第二項前段に違反し許すべからざるものである以上、アメリカ軍の施設又は区域の平穏に関する法益が一般国民の同種法益以上の厚い保護を受ける合理的な理由は何ら存在しないところであるから、国民に対して軽犯罪法の規定(拘留又は科料)より特に重い刑罰をもって臨む刑事特別法第二条の規定(一年以下の懲役又は二千円以下の罰金もしくは科料)は、なに人も適正な手続きによらなければ刑罰を科せられないとする憲法第三十一条に違反し無効なものといわねばならない。
 よって、被告人等に対する公訴事実は起訴状に明示せられた素因としては罪とならないものであるから、刑事訴訟法第三百三十六条により被告人等に対しいずれも無罪を言渡す。
                    昭和三十四年(1959年)三月三十日
                    東京地方裁判所刑事第十三部
                        裁判長裁判官  伊達秋雄
                            裁判官  清水春三
                            裁判官  松本一郎
砂川判決 要旨(PDF)


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